4 地衡風調節

定常的地衡風が何故変動するか。

6.31は500hPa等圧面天気図で, 偏西風は波を打ちながら流れている。この波は比較的変化が穏やかで,波長が

数千km程度の長い波で長波スケール,総観規模の波動じょう乱という。ここでも地衡風が良い近似で成り立って

いる。

 

 

 図6.31 北半球500hPa(気象庁)

 

しかし,地衡風は加速度=0の定常流を仮定したものである。実際の流れはそのまま続くことはなく,波動じょう

乱は変動していく。大気中ではいろいろな原因で力の平衡状態が破れる。空気に働く力は釣り合わなくなり,運動方

程式F=mαから加速度が生じて運動の状態が変わる。このときに2つの波動じょう乱が発生する。

態が変わる。このときに2つの波動じょう乱が発生する。

 

1つは「気象学的雑音」と呼ばれ,このじょう乱は変化が激しく,高速・高周波の波で,偏西風帯では東と西に急

速に伝播・分散して消滅する(数値予報ではこのじょう乱をできるだけ除去する工夫をしている)。そうすると,も

う1つの波動じょう乱が残ることになる。このじょう乱は気象学的雑音と正反対の性質で,変化は穏やかで東へゆっ

くり進む低速・低周波の波である。

天気図上で見られる大規模スケールのいわゆる総観規模じょう乱である。この波は波長が長く地衡風で近似できる。

 

このように力の平衡が崩れても地衡風的な流れに戻ることを大気の地衡風調整(機能)という。

地衡風は空気の運動のひとつの近似でありある時間において,空気に働く力は気圧傾度力とコリオリ力の2つであり,

その力は釣り合い,流れは直線で,等圧線(等高度線)は平行である